哲学覚書

選好の覚書

選好という概念は、道徳哲学や意思決定理論を含む多くの学問領域において中心的な役割を果たしている。選好とその論理的性質は、合理的選択理論(現代経済学に浸透している主題)やその他の形式的社会科学の分野においても中心的な役割を果たしている。選好という概念とその分析手法は、これら分野のあいだで様々である。すべての使用法のニーズを考慮し、統一されたアプローチでそれらを組み合わせようとする扱いは未だない。本稿は、選好概念の最も重要な哲学的使用を概観し、それらの整合性と衝突を探求する。

1. The Basic Concept of Preference

本稿では、選好概念を主観的比較的評価(subjective comparative evaluations)として議論する。その形式は「行為者AはYよりXを選好する(Agent A prefers X to Y)」である1

選好は評価である。それは価値に関わるものであり、通常、実践的推論と関係している。このことが、選好概念と事実に関する概念との違いである。

選好は、その評価が通常主体に帰せられるという点で主観的である。この主体とは、個人の場合も集団の場合もありうる。この点が、選好概念と「XはYよりも良い」と客観的に言う場合との違いである。選好論理はしばしば、そうした客観的評価を表現するのにも用いられる(e.g. Broome 1991b)が、選好のかなりの概念はこの主観的要素を含んでいる。

選好は、Yと比較してのXの評価を表現するものだという点で比較的である。これが、選好と、「良い」とか「望まれている」のような一項概念との違いである。

ほとんどの哲学者は、評価されるものは命題であると見做している。これと対照的に、経済学者は一般に商品のまとまりを評価されるものと見做している。商品のまとまりはベクトルとして表現され、ベクトルの各項は特定の商品を表しており、その項のスカラーは商品の個数を表している。簡単のために、経済学者はしばしば二つの商品からなる世界を扱う。そのうち一つの商品は通貨交換比率基準(numeraire)であり、他のすべての商品を表す(お金は最も一般的なnumeraireである)。しかし、このアプローチは難しい曖昧さを抱えている。もし選好が選択肢の主観的な評価なのだとしたら、重要なのはこれら商品を用いて得られる結果であって、商品それ自体ではないはずだ。ある主体がAとBどちらに選好をもつかは、その主体が何をしようとしているかに依存するだろう。経済学者はこの曖昧さを、商品への選好に、家計内生産関数(household production function)を合わせることで、解決しようとしてきた(Lancaster 1966, Becker and Michael 1973)。しかしこれら要素は決定がきわめて困難であるので、世界の状態の命題的な表現にこだわるほうが倹約的であるとしばしば考えられている。

選好への真剣な取り組みは20世紀において始まった。社会科学において、フィッシャー(1892)とパレート(1909)が快楽主義的な基数的効用に対して方法論的批判を行なったことで、選好概念は説明・予測の目的にとって重要なものとなった。パレートは「快楽主義的な基数的効用は正確な測定の手続きが利用可能でないので、社会科学者は単なる序数的比較に自らを制限すべきだ」と論じた(Bruni and Guala 2001)。この議論によって、快楽主義的な効用に代わって、選好が釈迦化学の基礎概念となったのだった。

1930年代、経済学者(Hicks and Allen 1934)はパレートのアイディアを押し進め、経済学から心理学的快楽主義を抹消するために基数的効用は排除されるべきだと論じた。しかし、彼らの選好概念は心理学的内容を保持していた。すなわち、人々は目的を実現するように行為すると仮定されており、それゆえ人々は(行動の事後の合理化ではなく)本当に心的な評価を構成するような選好をもつと仮定されている(Lewin 1996)。さらに、Ramsey (1926) や von Neumann and Morgenstern (1944) は、選好の等級の表現を効用関数として許す形式的道具立てを考案した。この新たな効用はしかし、以前の快楽主義的な概念とはきわめて異なるものであった。ここでは選好概念が基本であり、基数的効用関数は単に導出されたものなのである。

心理学者もまた、古き心理物理学的仮定から抜け出そうとし、選好のような心的概念を疑いの目で見始めた。代わりに心理学者は、心的出来事を関係づけたり測定したりするだけでなく、これまではそれらを関係づける基準であった行動主義的基準によって実際に心的状態と置き換えようとした(行動主義の項目を参照のこと)。また一方、経済学者ポール・サミュエルソンは、選好概念によってこの原理をもっと明示的に定式化した。「効用分析の最後の痕跡を捨てて新たに始める」ことを彼は提案した(Samuelson 1938: 61–62)。選好は選択から定義されることになり、心的状態への言及は消去された。このアプローチは当時非常に影響力をもつものだったけれども、経済学者のほとんどはサミュエルソンの急進的な提案に従わなかった(Hausman 2012)し、実際にはサミュエルソン自身も後に考えを改めた可能性がある(Hands 2014)。(一部の)経済学と心理学における拡大する意見の一致により、選好の序数的な心理学的解釈が現在これらの学問においては支配的であるように見える。しかし、経済学者が使用している現在の選好概念がこの心的で「前理論的な」概念なのかそれとも別の理論的概念なのかについては哲学者のあいだで進行中の議論がある(Mäki 2000, Ross 2014)。

社会科学における概念的発展の結果、哲学において選好概念がにわかに注目を集めた。快楽主義的な効用概念がますます疑問視されるようになったため、功利主義的哲学者はその倫理学理論の基礎となるものを探した。今日では、選好主義(preferentialism)は個人の選好の充足を唯一の内在的価値の担い手であると主張し、内在的価値は福利であると同定する。福利は任意の選好の充足によって構成されるという考えを擁護する人はほとんどいないが、多くの著者は洗練されたバージョンの選好主義を擁護している(e.g. Rawls 1971, Scanlon 1998)。哲学者はまた、選好論理において選好の形式的性質を議論してもいる。これについては次節で検討する。

2. Preference logic

哲学における選好への言及がすべて形式的道具立てを利用しているわけではないが、選好はほとんどつねに、形式言語で最もよく記述できる種類の構造的性質をもつと仮定されている。選好の構造的性質の研究はアリストテレス『トピカ』第三巻にまで遡ることができる。20世紀初頭から、哲学者は論理学的道具立てを用いて選好の構造を研究してきた。ハルデンとフォン・ウリクトが最初に選好論理の完全な体系を提案した(Halldén 1957, von Wright 1963)。この主題は効用理論、ゲーム理論、意思決定理論にも重要なルーツをもつ。選好論理によって研究される選好は普通、合理的個人の選好であるが、選好論理は心理学や行動主義経済学においても用いられる。

2.1 Concepts and notation

better(strict preference)とequal in value to(indifference)という二つの基礎的な概念がある(Halldén 1957, 10)。これらの用語は人間の願望を表現するのに用いられるが、それらは客観的に(または間主観的に)妥当なbetternessを表現するのにも用いられる。しかし、betternessやvalue equalityの構造的(論理的)性質はわれわれが通常「選好」と呼ぶものと対応しているときとそうでないときとで異なるようには思われない。標準的には「選好論理」という語は、非形式的な文脈では「選好」という語を普通用いないようなケースにおける概念も含むような、これらの概念の論理のことを指して用いられる。

選択肢のあいだの選好関係と無差別関係は通常それぞれ、≻ と ~ という記号(あるいはPおよびIという記号)で表される。長年に渡る哲学の伝統に従って、A≻Bは「BはAよりも悪い」すなわち「AはBよりも良い」を表すと解釈される。

選好の対象は、選好関係の関係項(A≻BにおけるAとB)によって表現される。形式的構造を十分に明確にするために、すべての選好関係は特定の関係項の集合のうえに定められるものと仮定される。ほとんどの利用においては、関係項は相互に排他的なものと仮定される。相互に排他的な関係項の集合のうえの選好は、排他的選好と呼ばれる。関係項の集合が相互に排他的であるとき、選択肢集合と呼ばれるのが慣習となっている。

次の四つの性質は通常、(厳密)選好と無差別の概念の意味の一部であると見做されている。

  1. A≻B → ¬(B≻A)  (asymmetry of preference)
  2. A∼B → B∼A  (symmetry of indifference)
  3. A∼A  (reflexivity of indifference)
  4. A≻B → ¬(A∼B)  (incompatibility of preference and indifference)

1.から、厳密選好はirreflexiveであることが導かれる。つまり、¬(A≻A)。

関係「≽」は「少なくとも同じくらい良い」を意味し、次のように定義されうる。

  • A≽B ↔ A≻B ∨ A∼B  (weak preference)

ときに、「≽」の代わりに「R」が用いられることがある。

便利であるという理由で、弱選好は通常、選好論理の原始的関係と見做される。したがって、厳密選好と無差別は派生的関係として導入される。

  • A≻B iff A≽B and ¬(B≽A)
  • A∼B iff A≽B and B≽A

慣習的に、次のような表記法が用いられる。第一に、連鎖的な関係は省略して書かれる。 A≽B ∧ B≽Cの省略形としてA≽B≽Cが、A≻B ∧ B≻C ∧ C∼Dの省略形としてA≻B≻C∼Dが用いられる。第二に、繰り返し記号として「*」が用いられる。 A≻*Cは、「A≻C、または、B₁…Bₙが存在して、A≻B₁ ∧ B₁≻B₂ ∧ … Bₙ₋₁≻Bₙ ∧ Bₙ≻Cが成り立つ」を表す。

2.2 Completeness

選好論理のほとんどの利用においては、完備性(completeness)あるいは接続性(connectedness)と呼ばれる性質が当然のものと見做されている。

  • A≽B ∨ B≽A

あるいは同値なものとして、A≻B ∨ A∼B ∨ B≻Aがある。

次の弱いバージョンはときに有用である。

  • A≠Bならば、A≽B ∨ B≽A  (weak connectivity)

完備性は一般に多くの利用において仮定されており、とりわけ経済学ではそう仮定されている。ベイズ主義意思決定理論が典型例だ。ベイズ主義意思決定者は、利用可能な選択肢のうえの完備な選好順序に一致するように意思決定する。しかし、多くの日常的な場面では、われわれは完備な選好をもっていないしもつ必要がない。ある人がA、B、C、D、Eのうちから選ばなければならない場合を考えよう。もしその人がAを他のどれと比較しても選好しているならば、その人はB、C、D、Eのあいだの順序付けをする必要はないのである。

解決可能性の観点から、選好の不完備性を三種類に分けることができる。

第一に、不完備性は一意に解決可能でありうる。この種の不完備性の最も自然な理由は、知識や反省の不足である。不完備な選好としてわれわれが知覚するものの背景には完備な選好関係が存在しており、われわれはその選好に観察、内省、論理的推論といった発見の手段を通じて到達する。

第二に、不完備性は複数解決可能でありうる。このケースでは、以前に包含されなかったケースを包含するよう関係を拡張した結果がどうなるかは、本当に未確定である。

第三に、不完備性は解決不能でありうる。これの最も自然な理由は、選択肢が、同じ条件に置くことが不可能であるような利点や欠点の観点で異なることである。例えば、人は、特定の二人の知人の死か特定の友人の死のどちらを選好するかを言えないことがありうる。同様に、ギザのピラミッドの破壊とジャイアントパンダの絶滅のどちらを選好するかも言えないことがありうる。環境経済学においては、環境破壊は金銭的損失と比較可能なのかどうか、あるいはどの程度比較可能なのか、ということが論争中の問題となっている。

同じ測定単位で測ることが不可能であるとき、二つの選択肢は「通約不可能」であると言われる。解決不能な不完備性のケースはしばしば通約不可能性のケースでもある(Chang 1997)。道徳哲学においては、解決不能な不完備性は通常、道徳的ジレンマの観点から論じられる。

2.3 Transitivity

間違いなく、選好の性質のうち最も議論されるのは次のも(推移性)だ。

  • A≽B ∧ B≽C → A≽C  (transitivity of weak preference)

他の二つの関係の対応する性質は次のように類比的に定義される。

  • A∼B ∧ B∼C → A∼C  (transitivity of indifference)
  • A≻B ∧ B≻C → A≻C  (transitivity of strict preference)

弱選好関係≽の厳密部分≻が推移的であるとき、≽は疑似推移的(quasi-transitive)であると言われる。

推移性に関連して、他の多くの性質が定義されてきた。それらのうち最も重要なのは次の三つ。

  • A∼B ∧ B≻C → A≻C  (IP-transitivity)
  • A≻B ∧ B∼C → A≻C  (PI-transitivity)
  • There is no series A1,…,An of alternatives such that A1 ≻…≻An≻A1  (acyclicity)

これらはどれも、≽の推移性を弱めたものである。言い換えれば、もし≽が推移的であれば、≻も∼も推移的であり、かつ、IP推移性、PI推移性、非循環性を満たすということである。

さらに、もし≽が推移的であれば、≻を含む循環は不可能である(つまりA≽*B≻AとなるようなA、Bは存在しない)。こうした「≻を含む循環」のある選好は、循環選好(cyclic preferences)と呼ばれる。

推移性は議論の余地のある性質であり、推移性が一般には成り立たないことを示す多くの例が提出されてきた。古典的な反例は、いわゆる砂山のパラドックスである。多くの対象があってどの二つを取っても見分けがつかないが、どれくらいの量があるかは区別できる、という場合を考える(Armstrong 1939, Armstrong 1948, Luce 1956)。1000杯のコーヒーがあるとし、C0, C1, …, C999と番号がついているとする。C0は砂糖が入っておらず、C1は一粒の砂糖が入っており、C2は二粒の砂糖が入っており……というふうになっている。C999とC998の味の違いを認識することはできないので、それらは同じくらい良いと見做すことになり、C999~C998となる。同様に、C998~C997, …, C1~C0も成り立つ。しかし明らかにC0 ≻ C999である[ということが可能である]。これは無差別の推移性に反しており、それゆえ弱選好の推移性にも反している。

ウォレン・クインによって提案された有名な例では、装置が人(自傷者)の身体に埋め込まれている。装置は0(off)から1000までの、1001の設定をもつ。数値が1上がると痛みも増加するが、その増加は無視できるほど小さいものである。毎週、自傷者は「二つの選択肢のみをもつ。数値を設定をそのままにするかダイアルを一つ分回すかだ。しかし彼は毎週一つの段階のみを進みうるので、彼は決して撤退しない。一つ進むごとに彼は10000ドルを手にする」。このようにして、彼は「最終的に彼は、喜んで幸運を手放し0に戻るほどの痛みを与える設定にまで達する」だろう(Quinn 1990, 79)。

[以下、「人は実際には必ずしも推移性に従っていないが、選好の推移性は規範的には擁護しうるとする哲学者は多い」みたいな話が続く]

2.4 Order typology

もう一つ、選好関係の性質が明確に述べられる必要がある。それはantisymmetricという性質だ。

  • A≽B ∧ B≽A → A=B  (antisymmetry of preference)

選好関係がどんな性質を満たしているかによって、次の表のような名前がつけられている(based on Sen 1970a)。

Properties Name(s)
1. reflexive, transitive Preorder, Quasi-order
2. reflexive, transitive, anti-symmetric Partial order
3. irreflexive, transitive Strict partial order
4. reflexive, transitive, complete Total preorder, Complete quasi-ordering, Weak ordering
5. reflexive, transitive, complete, anti-symmetric Chain, Linear ordering, Complete ordering
6. asymmetric, transitive, weakly connected Strict total order, Strong ordering

2.5 Combinative preferences

2.1〜2.4節では、排他的選好(相互に排他的な集合を指示するような選好)について見てきた。実際には、人々は相互に排他的でない関係項のあいだの選好をももつ。これらは結合的選好と呼ばれる。

  • p≽q → p≽(p∨q)≽q  (disjunctive interpolation)
  • p≽q → ¬q≽¬p  (contraposition of weak preference)
  • p∼q → ¬q∼¬p  (contraposition of indifference)
  • p≻q → ¬q≻ ¬p  (contraposition of strict preference)
  • p≽q ↔ (p∧¬q)≽(q∧¬p)  (conjunctive expansion of weak preference)
  • p≻q ↔ (p∧¬q)≻(q∧¬p)  (conjunctive expansion of strict preference)
  • p∼q ↔ (p∧¬q)∼(q∧¬p)  (conjunctive expansion of indifference)
  • (p∨q)≽r ↔ p≽r ∧ q≽r  (left disjunctive distribution of ≽)
  • p≽(q∨r) ↔ p≽q ∧ p≽r  (right disjunctive distribution of ≽)

2.6 Preference-based monadic value predicates

betterやof equal valueといった比較的な概念に加えて、価値に関する非形式的な言説には、good、best、very bad、fairly goodなどの単項(一項)価値述語が含まれている。これら概念を表現する述語は、選好関係を含む形式的構造のうちに入れ込むことができる。

goodとbadという基本的な単項述語を選好関係から定義するべく、二つの主要な試みが為されてきた。その一つは、goodをbetter than its negationとして、badをworse than its negationとして定義するというものである(Brogan 1919)。

  • $G_N p \leftrightarrow p\succ\lnot p$  (negation-related good)
  • $B_N p \leftrightarrow \lnot p\succ p$  (negation-related bad)

もう一つの定義は、goodやbadに先立って中立的な命題の集合を導入することを必要とする。良さは、ある中立的命題よりも良いようなすべてのものに基づいている。悪さは、ある中立的命題よりも悪いようなすべてのものに基づいている。このアプローチの最もよく知られたバージョンは Chisholm and Sosa (1966) によって提案されたものである。チザムらによれば、状況が無差別であるのは、その状況がその否定形よりも良いわけでも悪いわけでもないときかつそのときに限る。さらに、状況が良いのは、ある無差別な状況よりも良いときかつそのときに限る。状況が悪いのは、ある無差別な状況よりも悪いときかつそのときに限る。

  • $G_I p \leftrightarrow (\exists q)(p\succ q\sim\lnot q)$  (indifference-related good)
  • $B_I p \leftrightarrow (\exists q)(\lnot q\sim q \succ p)$  (indifference-related bad)

否定に基づく「良い」と無差別に基づく「良い」とは、必ずしも一致しない。どちらの定義も、完備な選好関係を念頭に開発されているが、より一般的なケースを包含できるように拡張することが可能である(Hansson 2001)。

goodとbadという単項述語によって選好を定義する提案が、van Benthem (1982, p. 195) によって提案された。その提案によれば、良さと悪さは選択肢の集合との関連で定義される。したがって例えば、$G_\set{x,y}x$は「{x,y}のなかではxは良い」を意味し、$B_\set{x,z,w}x$は「{x,z,w}のなかではxは悪い」を意味する。これは次の定義を生む。

  • $x\succ y \iff G_\set{x,y}x\land\lnot G_\set{x,y}y$  (goodness-based preference)
  • $x\succ y \iff B_\set{x,y}y\land\lnot B_\set{x,y}x$  (badness-based preference)

しかし、これら二つの定義は等しくなく、どちらかがより説得力があるというわけでもない。例えば、{x,y}という文脈で、xは「良い、かつ、悪くない」とし、yは良くも悪くもないとしよう。すると、第一の定義でx ≻ yが成り立つが、第二の定義で¬(x ≻ y)が成り立つ。こうした問題を避けるために、Hansson and Liu (2014) は次の定義を提案した。

  • $x\succ y \iff G_\set{x,y}x\land\lnot G_\set{x,y}y$ or $B_\set{x,y}y\land\lnot B_\set{x,y}x$  (bivalently based preference)

文献

  • Hansson, Sven Ove and Grüne-Yanoff, Till, “Preferences”, The Stanford Encyclopedia of Philosophy (Summer 2018 Edition), Edward N. Zalta (ed.).

  1. 価値理論の文脈で言えば選好とはbetter forに相当する概念と言えるだろうか。 ↩︎

2020年4月3日
2021年8月14日
#ethics #logic #SEP