哲学覚書

Broersen et al. (2008) の覚書

梗概 本稿は、戦略的相互作用における提携の選好と選択とのあいだ相互作用の性質について論ずる。提携的に最適な選択と社会的に最適な選択とのあいだの衝突について語るために、ある言語を提示する。規範は、社会的に望ましい結果を強制することを可能にする社会的構築物として理解される。

Introduction

社会的選択理論の一つの根本問題は、社会全体として取るべき意志決定を形成するために、いかにして個人の行為者の選好を合計すべきかというものである。しかし、いったん行為者の能力を(複数行為者体系(Multi Agent Systems)で行なっているように)考慮したいと思うならば、単なる社会的選択関数は、いかにして、そして(とりわけ)なぜ、個人の利益はそのような仕方で合計されるのかを説明するのに不十分である。この文脈において、規範は、社会的に望ましい結果を強制することを可能にする社会的構築物として理解されるべきである。

とりわけ、複数の個人の選好が一致していない状況や、複数の提携が競合して何らかの社会秩序を達成しようとしている状況が存在する。本稿でわれわれは、規範の制定を、こうした相互作用の規制を目指すものとして見做すことになる。ここで規範の制定とは、複数行為者体系における個人的・集合的選択に対する規範的制約の導入を意味する。

われわれは特に、集合的視点が個人的視点と食い違うような場合に関心がある。すなわちわれわれの関心は、全員が他人の利益と無関係に自分にとって最良の行為を選ぶと最適でない結果が生じると考えられる場合である。よって、われわれの主な問題は「いかにしてわれわれは、どの規範が課せられるべきかを決定するのか」となる。

この問題に答えるために、本稿は、提携的に最適な選択と社会的に最適な選択とのあいだの衝突について語る言語を提示し、そうした状況を指示する義務論的概念を表現する。

Motivating Examples

表1は囚人のジレンマ型の状況。この場合、協力することはプレイヤー自身の利益に適う。というのもナッシュ均衡よりも良い状態となるからだ。しかし、プレイヤーが自分自身の利益を追い求めるべきでないということは決して明らかでない。実際、(自白する,自白しない)という状態はパレート最適であり、一方の利益を高めるには他方の利益を低くするしかないのである。

表2は、古典的な「協力ゲーム」の状況。

A deontic logic for efficient interactions

いったん複数行為者体系を規制するものとして義務論的言語を見做すと、「命令の集合が、他の相互作用を禁止して、ある相互作用を促す」と言いうる。この推論に従うと、ある最適性ないし効率性の概念を所与として、この概念を保持することを要求する義務論的言語を構築することが可能である。

4. Conclusion

本稿では、最適な社会的規範を扱いうる義務論理を提案した。われわれは、パレート最適という経済学的概念と明示的に接続することで、社会的最適性の概念を記述した。さらに、行為者の全体提携がすべての結果を達成することはできないような戦略的相互作用を捉えるために、パレート最適の概念を一般化した。技術的には、提携的有効性関数の実行可能性(playability)を仮定しなかった。

文献

2020年4月24日
2021年8月14日
#ethics #logic